アーティスト・イン・レジデンス

屋内の旅
1794年、グザヴィエ・ド・メーストル氏は決闘した罪で42日間の自宅監禁の刑に処された。その際、彼は「Voyage autour de ma chambre」(部屋をめぐる旅)という獄中記を書いた。作中では、適切な心構えさえあれば、身の回りの日常にも新たな冒険が潜んでいるため、屋内でも大いなる旅が出来ることがわかる、と書かれている。
それから230年、artist in residenceという、この作品では、東京のビューローデチュードジャポネーズ研究所の昭和63年築の1LDKを隅々まで窺い見ることができる。そして、そこには同時に、このアーティスト・イン・レジデンスの指針となった疑うべきルールも提示されている。

«“「•••」”»
これは、作品の「顔」。弊所を日常的に混乱させている言語(英仏日)それぞれの引用符に囲まれた3点リーダーから成る。この箱入り作品のメインは、長さ3.6mのジャバラ本(アコーディオンブック)なのだ。



ルール
左から右にページを進んでいくと、文章と図が並び、このアーティスト・イン・レジデンスのルールが明らかになる。ページ内に開いた枠から見える人物が、それを言っているのかもしれない。もしくは、それらの言葉は、単に繰り返されたり、誤って引用されたりしたものなのかもしれない。



場所
左にページを進むと、弊所の日常生活のシーンが現れる。この写真は、19世紀に日本という国を世界に広めた「横浜写真」と呼ばれる彩色写真からインスピレーションを得ている。枠には今度は、これらのシーンの位置が示されている。




作業中のアーティスト
制作過程で、作品の「顔」は絵文字となり、短編アニメーションの中で命を吹き込まれる。

付録
メイキングの写真や参考とされた時代の写真は、折り畳みポスターとして集められている。その中には、19世紀に8年間日本で働いた所長の祖先ルイ・フェリックス・フローランの手紙と肖像画も含まれている。



アーティストブック
artist in residenceの箱からは重層的な体験が展開される。ジャバラ本(アコーディオンブック)と付録に加えて、自分で絵文字を作るための切り抜きカードもある。セットのすべては手作りで、ナンバー及びサイン入りの100部限定で出版される。

1~20のエディション番号にはアニメーションに登場する絵文字のユニークなインスタントプリントが含まれる(写真の顔の仕様はすべて異なる)。


